身体心理療法では、グラウンディング(根付き)、
いわゆる「地に足が着く」事を大切にします。
言葉の通り
心理的に安心している人は
地面と身体がしっかりと結ばれています。
これは自分の存在感をどれだけ感じられて
いるのかを現わします。
心理的緊張が強かったり、
自分の本当の気持ちを見せられない場合は
身体を吊り上げ、足が宙に浮いていたり
足の外側へ体重が乗ったりするため、
足や腰周りに無理な力を入れることになります。
身体心理で言えば
落ちる事、失敗への恐れ
成り行きのまま感情に没入することへの恐れです。
私も勤めていた時は、緊張感を持つ場面が多く
ニコニコとしてはいるものの
上半身はあがりきっていて
足腰はカチコチに緊張していました。
ただの反り腰位に思ってましたが。
当時は
立場や役職に囚われず
ためになると思った事は何でもやっていたし、
上司や先輩に意見する事など日常でした。
周りからは自由で我がままに
仕事をしている人に見られていたでしょうし
私自身も自由だと思い込んでいました。
まさに思い上がりです。
ただそれは、
不安を隠すための一つの手段でした。
実際は独りになると事務所へ入り
あれこれ考えては空想の世界へ旅立っていたものです。
実は
毎日帰りの車の中で溜まった感情を吐き出していて
助手席にイメージの人物を座らせ
ボコボコに論破するなんて
ゲームまで生み出していましたwww
これはゲシュタルト療法で行う
エンプティチェア、サイコドラマに当たりますが
今思えば、
自然と感情の処理の仕方を身につけていたのは
感慨深い所です。
頭から身体へ
私の体験からも言えるように
現代の生活は思考に偏る事が多く、
自然に感情が鬱積していきます。
話すと饒舌で健康に見える人でも
力の感覚が上へ流れ過ぎていて
身体が吊り上がっている人がとても多いです。
情報過多の中で
世の中全体が浮き足立っているとも言えます。
動かざるは山の如し、といいますが
山を支えるものは土台であり
人間で言う足腰です。
思考的な活動は活発でも
膝をピンと伸ばしていたり、
太もも、お尻の力が過度にかかっている人は
ある意味軍人のような状態です。
規律規則や上官を気にすることに頭を使い過ぎ
気が抜けない(緊張をやめられない)状態。
外側のセンサーは敏感になっていく反面
自分の存在や偉大さは感じにくくなっていきます。
特に膝や腰周りが硬い緊張型の人は
動じない自分、大丈夫な自分といった
ある種の信仰的な性格形成をする特徴があります。
緊張を保っている限りは
苦しみを自覚せず、
上の空で居続ける事が出来るわけです。
この能力は
社会的に素晴らしい成果を出すことも多いですが
理想やイメージの中に入りすぎると
身体の緊張、心の緊張が強まり続ける事も、
もれなく付いてくることがわかるでしょうか。
あるセラピーの中に
「信仰心とは抑圧の尺度である」
という言葉があります。
そこだけをピックアップすれば
言い過ぎな表現だと思いますが
本質をついたシンプルな言葉とも思います。
私の場合で言えば、
組織にいた時は
「利用者主体であるべき」信仰。
「わかってないやつはいらない」信仰。
「実力にあった対価をもらうべき」信仰。
でした。
本当は
辛い、寂しい、助けて欲しいはずの
自分の存在を
感じないように、見せないように
必死で足腰を緊張させていました。
信念や信条は時に本来の自分を抑え込む
苦しみの原因にもなるんだ、という事です。
成り行きに任せる事
緊張型の人は
悲しさや弱さを否定し
自分は大丈夫なんだ!
という心理状態を作るために
硬直しているわけですから、
自分は本当は苦しい
と認める事は容易ではありません。
それでも私はプロとして、
いや、意地悪なので笑
諦めずカウンセリングで
話を深めて、深めて、深めていきます。
そうしていると必ず根源にある
無自覚だった心理的負担は見えてきます。
それは様々な固有の体験ですが、
共通するのは
頑張り過ぎた過去の体験に由来している事です。
長年続いた心理的緊張です。
足のワーク
こういう症状の方には
足と心の緊張を解放していく必要がありますが
足の緊張を解き放つためには
あがりきった力を下に降ろすことです。
解き放つ方向は上ではなく下です。
足の役割は
重力に対抗して下に向かって力を加えること。
落ち着く、というのも落ちて着地する、です。
下方向です。
心理的気づきと共に
蹴る動きや蹴り下ろす動きをする事で
鬱積していた感情や情動が解放されます。
いつも考えが止まらない人や
実際に上半身の緊張が気になる人は、
自分の動きや感情の大きさに
始めは驚くと思います。
私も溜め込む事が多かったので、
ワークを行う度に
噴火したように感情が溢れ
足が動きまわるのに
びっくりしたものです。
動き切ると、嵐の後の静寂が訪れます。
こんな清々しい自分がいたのかと
また驚く事でしょう。
足腰の緊張が気になる方は是非
グラウンディングのワークをおすすめします。